刑事課と少年課の刑事さん
面会の後、病院玄関で待っていた刑事課と少年課の刑事さんからの話しがあるとのことで、控室へ移動する。
自殺未遂となると、通報後に家に来た警察官だけが関わるわけではないことをこの時に初めて知った。
刑事と聞くだけで、何も悪い事をしていないのに緊張が高まる。
だがお二人とも柔和な感じのどこにでもいそうなおじさんという印象だった。
刑事さんたちと話したこと
刑事さんたちと話しをするといっても、各担当医が入れ代わり立ち代わり病状と治療方針の説明のために控室に入ってくるので、まとまった時間を事情聴取に充てられたわけではない。
話しもぶつ切れで、頭もぼうっとしていたので、聞かれたことは今となってはうろ覚えだが、以下のようなことだったように思う。
- 友達と何かトラブルはなかったか?
- 思い当たる原因はあるか?
それほど特別なことは聞かれなかった記憶がある。
また、飛び降りた場所までの足取りもこの時に教えていただいた。
手に持っていたお菓子の入ったレジ袋以外所持品はなかったこと、
お菓子は途中で手に入れたものかどうかわからないこと(レシートがない)、
近くのコンビニの防犯カメラや聞き込みでも立ち寄った形跡がないこと、
飛び降りた建物の玄関の防犯カメラに写っていた時間と通報までタイムラグがあったこと(つまり、飛び降りた時間が不明)、
建物内の防犯カメラや住人の聞き込みから、事件性はないと考えられること、
建物の手すりなどは比較的新しく、跡が残りにくい素材なため、飛び降りた場所が特定できないが、エレベーターは最上階で止まっていたこと、
ドーンという音がして、すぐに110番通報をしてくださった住人がいたこと、、、
その時に、
「これを持ったまま飛び降りたようなので、ちょっとあれなんですが・・・」
と、一緒にいる下の子を気遣いながら、血の付いた所持品のガムやキャンディーなどのお菓子が数点入ったレジ袋が返却された。
そっとレジ袋の中をのぞいた。
家を出る前に風呂に入って、このお菓子を食べながら、あの子はどんな気持ちであの建物まで歩いて行ったのだろう。
これから死にに行くにしては、遠足へ行くようなそんな軽い感じもして、わが子ながらよくわからないヤツだと思った。
「意識が戻ったら本人にも話しを聞きたいので、何かあったら連絡ください。」
と刑事さんは言い、
「私もこれまで何件かこういったケースに遭遇しましたが、お宅さんのように命があったのは今回を含めて2件だけです。本当に運が良かった。これからですよ、お母さん。」
サラリと、でも、軽すぎずうっとおしすぎず、励ましの言葉をかけて控室から出て行かれた。
その後、ベッドサイドでも看護師さんから警察からの伝言だとメモをもらった。
そこには、
イシキでたら、少年『科』○○さん電話
と書いてあった。
病院で働く人にありがちな誤字である。(正しくは、少年『課』)
いじめや事件に巻き込まれた可能性もあるかもしれないということ
遺書の内容から私たちは、あの子が望んで飛び降りたと最初から思っていたが、そうではないケースもあるのだ、と刑事さんたちと話して初めてその可能性を考えた。
普段のあの子の様子を思い出し、ラインの履歴をチェックし、パソコンの履歴もチェックした。
やはりそれらしい形跡はなかった。
「少年(未成年)の自殺未遂は警察にもお世話になるんだね・・・」
「事件性なんて、考えてもみなかったね・・・」
主人と朝のまま散らかったダイニングで、朝ごはんだったはずの昼ご飯を無理やり口に入れながら話した。
下の子は、あの子が食べるはずだったお弁当をおいしそうに頬張っていた。
つづく。
おわりに
このページは自殺未遂をした家族(子ども)を抱える私の体験を振り返ったものである。
こんなプライベートなことを、ブログという媒体を通して全世界に公開しているなんてどうかしている、と自分でも思う。
私の個人的な体験を振り返ってもあの子が自殺未遂をした事実は変わらないし、それを受け入れる日が来るのもわからない。
でも、なぜか書き残しておきたいとずっと思っていた。
少しずつ、あの日もその前からもずっと記録をつけていた手帳を元に記事にしていきたい。
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