なぜ、若者(19歳以下)の自殺は減らないのか?自殺予防、対策についての情報を集めてみる。

若者 青少年の自殺予防について

先日新聞で、2018年の全国の自殺者数に関する記事を目にした。

全体としては減少しているが、19歳以下の自殺者数が二年連続で増加しているという。

各年代の数字を見ながら、うち子もこの中の一人としてカウントされていたのかもしれなかったんだ、とぼんやりと思った。

中高年の自殺対策が進み効果も出ている中、なぜ若者の自殺が減らないのか。

自分が当事者の家族になってから調べたこと、知ったこと、思ったことなどを今回はメモとして残しておく。

2019年(平成30)年度の自殺の統計

自殺者数などの統計は警察庁や厚生労働省のページで見ることが出来る。

これによると、

平成30年年間の累計自殺者数(20,598人:速報値)は、対前年比723人(約3.4%)減

この統計だけではわからないが、厚生労働省による18年1~11月の自殺者の分析では、19歳以下は16人増の543人となり、2年連続で増加しているとのこと。男性は35人減の331人、女性は51人増の212人。原因・動機別では、学校問題(169人)、健康問題(112人)、家庭問題(101人)などだった、と新聞には書いてあった。

平成29年までの詳しい自殺の統計については上記の厚生労働省のホームページ内に掲載されている。

しばらくたつと平成30年度の調査結果も公表されるのだろう。

それにしても、19歳以下の動機・原因が何例わかっていて、何例不明なのだろう。

遺書等の自殺を裏付ける資料により明らかに推定できる原因・動機を自殺者一人につき3つまで計上可能

とあるので、数字で確認のしようがなくわからない。

うちの子は

「ただただ、疲れた。」

と遺書に残していた。

何にどう疲れていたのか、今でも本人は話さないし、話しを聞いていても何かを隠しているようには感じられない。本当に何もかも疲れてしまって死ぬ以外の選択肢が考えられなかった感じだ。

うちの子のような若者(ティーンエイジャー)が、この自殺者としてカウントされている数字の中に結構な割合でいるのではないだろうか。

集まった自殺対策に関する資料

不安定な若者の内面と置かれた状況を知り、自殺予防のために役立つだろう資料やサイトをいくつかピックアップする。

オルタナSより、「茂木健一郎、脳科学で自殺を分析」

自殺の理由は人間関係の希薄さと指摘。

自立と自己責任の解釈の違いを明らかにし、『自立は、「複数人との関係性において、自分の役割をまっとうすること」』と。

確かに私はあの子を

「一人でなんでもできるようになりなさい。」

という自己責任にウエートを置いて育ててきた。しかし、あるきっかけにより小学校高学年からはこの方針を転換した。

人は助けを求め、知恵を借りることで自分の人生は楽になるし、豊かになることにようやく私自身が気付いたからだ。

大切なあの子の人生の土台作りの大きな部分を占める期間に、私はズレた子育て観でやってきてしまっていた。

その影響はあるかもしれない。

noteより、10代の自殺について(脳科学的に)本気で考えてみた

この投稿は思春期特有の脳の特徴を挙げ、その視点をいじめや教育問題に活かすことの重要性を説いたものだ。

あの子をずっと見てきて多少の違和感を感じていたのは、素直過ぎるところと衝動性の高さ、認知のゆがみ、過敏性だった。

といっても、様々なことを経験し成長するにつれその振れ幅は少なくなっていたし、過敏性もおさまっていった。今では私よりもあの子の方が感情のコントールが効くぐらいである。

ただ、小学生の時にお世話になったスクールカウンセラーの簡易テストのようなものでは、特性ありとは言われていた。

発達障害や自閉症スペクトラム障害の診断やそれらに関して専門機関に相談をしたことはない。家族を含む周囲も本人も困り感がなかったからだ。

あの子が飛び降り自殺を図り、少し時間が経ってから思い出したNHKの番組がある。

以下が放送内容のまとめである。

  • 思春期は性ホルモンの影響により他人の感情に敏感な時期である(偏桃体への性ホルモンの影響。)
  • 強い感情や衝動を抑制する機能を担う前頭前野の働きが十分に働き始めるのは25歳すぎであることが研究でわかってきている(16歳過ぎから成熟が始まる。)
  • 思春期の若者は大人の2倍もリスクのある行動をとりやすい(側坐核など快感の中枢への性ホルモンの影響。)

この放送とnoteの投稿内容、以前から気になっていたあの子の衝動性と単純な行動パターンーやってみないと実感できない、想像力の欠如ー、が今のところ一番あの子の自殺未遂の理由を考えるのにしっくりくるような気がする。

若年者の自殺対策のあり方に関する報告書

厚生労働省の自殺対策の一つ、自殺総合対策推進センター(平成28年発足)の前身である自殺予防総合対策センターが中心となって立ち上げたワーキンググループが平成27年3月にまとめた資料である。

児童青年期の精神科医による精神医学の視点のみでなく、教育学、社会学、心理学、公衆衛生学などの専門家も加わって若年者の自殺の予防、啓発、介入のあり方に関してそれぞれまとめられている168ページにも及ぶ報告書だ。

国内の児童青年期における自殺に関する研究が少ないことに驚く。この調査書には国内外の研究のレビューが掲載されている。それらを読むだけでもかなり参考になった。

以下は個人的に気になったところをピックアップした。

  • 児童青年期の自殺においては15歳前後を境に自殺に関わる要因に差異がみられること
  • 低年齢群では,精神科疾患の比率が少なく自殺前の明確なストレス要因や自殺の意図が明確ではないことが特徴であり,自殺の予防・対策においてより困難なことが予想されること
  • ほぼすべての国において,自殺既遂は女性よりも男性の方が多いとされていること(気分障害と物質・アルコール乱用の併存が多いこと,攻撃性の高さ,より致死的な手段の選択,などの複数の危険因子を有するため。例外は中国)
  • 男性の方が致死的な自殺企図が多く,女性は過量服薬や自傷行為などの比較的致死的ではない自殺関連行動を繰り返しやすいこと
  • 自殺企図の3~6か月後に再企図のリスクが最も高まり,企図後2年間は一般人口よりリスクが高いこと
  • WHOからも『自殺予防 メディア関係者のための手引き』が発表されていること
  • 若年者自殺に関する精神医学的研究分野において,国外では1980年代以降に欧米等を中心に疫学研究が行われ,現在は介入研究の段階にあるのに比して,日本では近年ようやく臨床研究の成果が報告され始めたばかりであること
  • 境界性パーソナリティ障害と自殺の関係
  • 若年自閉スペクトラムと自殺
  • 自殺の対人関係理論と絶望感理論
  • 思春期学・公衆衛生の立場からの意見が興味深い

量も多く内容も濃いが、参考文献を含めじっくりと読みたい調査書だ。

研究単体で検索中に気になったものをおまけで添付しておく。

自閉症スペクトラム児の自殺関連行動

あの子を発達障害であると思い込みたいわけではないが、納得する自分もいる。

脳科学辞典

脳科学分野の約1,000個の用語を解説し、無償で公開しているサイトである。

これまでメモとして上に挙げたような事柄が端的にまとめられている。

自殺を理解するための大きな助けになると思う。

これから読んでみたい本

自殺の内景―若者の心と人生 | 苗村 育郎 |

大学生が相手だが、目次やレビューを読んでいるとどの自殺関連本よりも読んでみたい一冊だと感じた。

自傷行為や○○依存、虐待などを取り上げた自殺対策関連の本を読むと、過去の自分が幼少時のあの子にしてきたこと、言葉がけ、すべてが自殺未遂の原因にあたるのだ、と強く責められているような気がして、気分がかなり重くなる。そのため今は読まないようにしている。

自殺予防関連の情報を集めるうちに自分の精神状態が不安定になる

「青少年」「19歳以下」「自殺」「原因」「動機」「理由」「対策」「予防」・・・

どれだけのキーワードを打ち込んだだろう。

最初はどうして19歳以下の自殺者数は減少しないのか?その理由と現在の対策を知りたいと単純に思って始めた検索だった。

国や地方自治体の自殺対策のpdf、啓発パンフレット、予防を訴える団体のサイト、医療者のレポートなど多くの資料に目を通すうちに、気づくとあの子の自殺未遂の理由をはっきりさせたい気持ちに変わってしまっていた。

当然だが、あの子の自殺未遂の理由についての答えは出てきてはくれなかった。

当たり前といえば、当たり前のことだ。

あの子は今、一番確率としては低いと両親共思っていた学校へ復帰し、普通に授業を受け、多くの課題もこなし、友人と話し、オンラインゲームを楽しみ、家族とも以前と同じようにしゃべり、見た目の傷と体力の低下以外飛び降り前と変わらず過ごしている。

あの子なりに前へ進んでいる、と思う。

過去は過去、今生きている時間を大切にしようと前を向こうと意識するけれど、無意識に蘇ってくる、なぜ?どうして?というずっと頭にあるモヤモヤやどうにかしたら飛び降りを防げたのではないだろうか?という思い。

この記事を書くまでは時々しかそういう心境にならないまでに私の心が回復してきたのに、この記事を書き上げるのに予想以上に時間を費やしてしまい、結果あの子の自殺未遂の原因のことばかりを考えることになってしまった。

理由という具体的なイメージが思い浮かばない状態が続くのは正直しんどい。出口が見えない周りに何があるのかがわからない獣道を歩いているようなものだ。

わけのわからない不安状態になると、今度は自問自答ループにはまる。なんのためにこの記事を書くのだ?と。

あの子と同じように医療機関につながっていなくても、特性があるなと感じながら子育てをしている親御さんに注意深く見守ってあげて欲しい、と伝えたいのか?

わが子が自殺未遂をして、それでも以前と変わらない生活を送り、でもいつまでも消えない心の中のわだかまり、違和感、恐怖、不安を抱えている私と同じような境遇の親御さんとその気持ちをわかちあいたいのか?

あの子の自殺未遂の原因が私にあると思いたくないから資料から探すのか?

よくわからない自殺未遂の原因の答えを知ってすっきりしたいのか?

あの子は今後二度と自殺企図することはない、と資料から確信したいのか?

こんなことを何週間も一人でぐるぐると考える。

この状況は精神的にはあまりよい影響を及ぼさない。

経験的にそういえる。

我が子が自殺未遂をしたなんて事実はそれだけでもう、十分すぎるほど衝撃的なことである。

回復したと思っても何かの拍子にすぐに引き戻されてしまうことになる。

こういった資料探しもほどほどにしておいた方がよい。

おわりに

今回は結果的に個人的にとても重い作業となってしまった。

青少年の自殺は突発的なことも多く、その対策も予防も十分ではない。もしかしたら、脳の構造など、生物学的な理由である一定数の自殺は減らないのかもしれない。

けれども、いじめ、虐待、経済的な理由、精神疾患など、理由が明らかなものだけでも青少年の自殺は減って欲しいと願っている。

悲しみ、怒り、不安に苛まれる家族・友人などがこれ以上生まれませんように。

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