歌に励まされるなんて、思ってもみなかった。WANIMA編

歌 元気になれること

十代だったころ、プリプリ(プリンセスプリンセス)のMをカラオケで歌う友達と、その歌を聞いて、

「泣けるー!!」

と言っていた友達のことがよくわからなかった。

ただの歌なのに、と。

学校への送迎で

退院後は学校までの行き帰りは車で送っている。

一般的な長さの曲だとだいたい片道3曲ぐらいは聞けるだろうか。

初めのうちはすでにオーディオに入っている曲をなんとなく流していた。

普段の外出と同じだ。

車中ではそれほど話すこともなく、でも、私の中には知って欲しいこと、伝えたい思いはたくさんあった。

もちろん、折に触れて

親より長生きして欲しいという親の願い

キミがいないと寂しい

今度死にたくなったら行動に移す前に教えてくれるとうれしい

だとか、そういうことは伝えていたが、何度言葉にしても、伝えても、ちゃんと本当に伝わっているのか自信がなかったし、自分の中にある不安は完全に消えることはなく、何かしたい、しなければ、と常に思っていた。

送迎を初めて一か月ほど経った頃だったか、誰かの歌、歌詞の力を借りて私の伝えたいことを伝えてもらうのもいいかもしれない、とふと思った。

いろんなジャンルのCDを片っ端からレンタルしてくる

片っ端からCDをレンタル、というと多少オーバーかもしれないが、事実カーオーディオから聞きたいアーティストを探すのが一苦労、そんな風に思うほどの枚数を次から次へ借りてきた。

あの子は流行りの歌というものに全くといっていいほど興味がない。

歌番組なども当然見ないので、私も今どきのアーティスト事情がさっぱりわからない。

とりあえず、「おススメ」だとか、「今週のランキング」というポップがあるCDをどんどん借りていった。

J-POP、ロック、パンク、R&B、洋楽、アニメ・・・

今どきの歌から、私が10代だったころの歌までさまざまなCDがカーオーディオの中に入った。

私が勇気づけられた

なんといっても意外だったのが、2018年発売のWANIMAのアルバム「Everybody!!」だった。

ロックなのか、パンクなのか、その辺りは詳しくないのだが、最初の印象は当然、

「騒がしいバンドだな。」

だった。

紅白にも出場していたんだっけ?と思い出し、PVを見て歌詞をじっくり見てから印象が変わる。

「WANIMAうるさいけど、いいよ。」

と主人にも見せる。

「うちのためにあるのか?っていうぐらいの歌詞だね。」

歌詞の一部を抜粋して引用するのがもったいないぐらい、すべてが響いた。

WANIMA -ともに Full ver.(OFFICIAL VIDEO)

本来は制汗剤のCMのために作られた曲だそう。

テーマは、「青春・部活・汗」

自殺未遂の家族なんて一番遠いところだ。

生きて耐えて時に壊れ泣いて迷う影に笑顔咲き誇る

生きていれば…命さえあれば…

送迎の時にうっかりこの曲になると涙が出てしまう。

そう、色々ある。

けれど、生きていれば、命さえあれば、いつでも何度でもやり直せる、チャレンジできる。

自分が子どもの自殺未遂という事実を抱えながらも、明日、もっと極端にいえば数十分後、数秒後も前を向いて希望をもって生きよう、そんな気持ちになれる歌だ。

あの子よりも、私がこの歌に力をもらった。

出逢えてよかった ありがとう

まさに、このフレーズだ。

あの子には今はメッセージが届かないかもしれないけれど

冒頭のJUICE UP!!のテーマに始まり、OLE!!、シグナル、CHEEKY。

ここまで一気に何もかも忘れられそうな勢いで明るく飛ばす。

今ではあの子も

「あのテンポがいい曲にして。」

とリクエストがかかるほどだ。

私の伝えきれない思いを歌から受け取って欲しい、というほのかな期待を抱いていたが、見事に「ノリ」だけで曲を選ぶあの子に、やっぱり私の子だ、と笑ってしまう。

私自身も内容よりはテンポやノリ重視なティーンだったからだ。

サブマリンなどは、うっかり口ずさんでしまうが、基本的にワンチャン系の歌詞は言葉遊びで下ネタがしっかり入るので、まだ小さい下の子はもちろん、ドストライクな世代のあの子にも危険は危険だが、まぁ、仕方がない。

今から約10年前の湘南乃風のアルバムを懐かしく聴いている私のように、これから何年かたって、いろんな曲を聞いて学校へ通った思い出と、学生生活の思い出とこれから作るであろうたくさんの思い出とともに、何かのきっかけでこのWANIMAのアルバムに再会して歌詞に自分自身を投影する日が、きっとあの子にも来るのだろう。

そして、

そんなこともあったね、とちょっと恥ずかしい思い出に変わる日がきっと、きっと来る。

おわりに

歌に感情移入なんて理解できなかった私が、子どもを産み、育て、いろんな経験を重ねていくうちに今や立派なエモいおばさんになっている。

子どものことを思って始めた試みのはずが、まんまと親の方がハマるのもよくある話しだ。

私を応援してくれる、そんな風に勝手に思い込みながら私は今日もWANIMAの歌を聴きながら、あの子の送り迎えをする。

追記:この歌のテーマはなんだと思う?と下世話なクイズを出すと

この記事は数日にわたって書いたものである。

あの子は「ともに」の歌詞のテーマをどう感じるのだろう?とふと思ったので、単刀直入に聞いてみた。

「ともに」の成り立ちについて調べたので、ちょっと聞いてみたくなったのである。

しばらく耳を澄まして曲を聴く。

「んー、生命保険?かな?」

正解の制汗剤のCMであることと、「青春・部活・汗」がテーマであることを伝えた。

一応納得はしていたが、最後まで聴いて、

「いやいや、やっぱり人生の歌でしょ、これ。」

と笑いながら言っていた。

人生。

今あの子が使う人生と、何十年後のあの子が使う人生の意味はきっと大きく違うんだろう。

あの子の背景を思いながら、もう一度あの子が使った「人生」という重みと意味を考えて、私は苦笑いした。

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